オフェンス

トライアングルオフェンス わかりやすく 【バスケットボール理論】

こんにちは、三原です。

「トライアングルオフェンス」とは、世界一有名なバスケのオフェンス戦術です。

なぜ有名になったのか?それは

NBAで11回も優勝したから、です。

しかも、マイケルジョーダンやコービーブライアントなどのスーパースターが、トライアングルオフェンスによって勝利を手にした、というストーリーがあるからです。

この記事では、わたしがトライアングルオフェンスをわかりやすく解説します。

この記事を読むメリット

  1. トライアングルオフェンスのしくみが他人に説明できるくらい理解できる
  2. あなたが指導者ならば、トライアングルオフェンスの指導法がわかる
  3. トライアングルオフェンスの考え方を、自分のチームに取り入れられる

時間がないから早く読みたい!という方は、マーカーの色の部分と図だけパッと見てくれれば、つかめると思います。

YouTubeも埋め込みますから、音声だけでも聞き流してくれてもOKです。

トライアングルの歴史

1989年、得点王のマイケルジョーダンがいながら、シカゴブルズはNBAで優勝できずに悩んでいました

そこでヘッドコーチのフィル・ジャクソンは、ある思い切った提案をします。

「テックス、あなたが昔考えたトライアングルをやろうよ」

テックスというのは、アシスタントコーチのテックス・ウインターのこと。

昔に大学生を指導していて、バスケの知識がハンパじゃないので、ブルズのアシスタントコーチに抜擢された人物です。

「え、トライアングルですか?それはちょっと。。。」

なぜならトライアングルは、大学生向きに作った作戦です。NBAに使えるとは思いませんでした。

トライアングルの特徴は

  • ポストでの1対1が
  • 能力の低い選手たちでも
  • 動きの中で計画されている

というものです。

ジャクソンは「動きの中で計画されている」というところに目をつけました。

結局、勝負所はジョーダンの個人技に頼ってしまう。周りの選手はただ止まってみている。

だからディフェンスは集中しやすい。ジョーダンだけを5人で囲めばいいわけですから。

ここにブルズの弱さがあると考えたジャクソンは「動きの中で計画されている」トライアングルオフェンスに目をつけたのです。

結果、ブルズは優勝しました。

しかも6回も。

ブルズを引退した後、ジャクソンとウインターは2人そろってロサンゼルスレイカーズに移籍します。

レイカーズはコービー、シャックというスーパースターがいながら、優勝できませんでした。

きっと、ジャクソンとウインターは、にやりとしながらこう語ったことでしょう。

「君たちが勝つための方法、それはトライアングルだよ」と。

そして、結果は、

1年目でいきなり優勝

しかもそのあと5回も。

この魔法の戦術を世界中が真似したがり、トライアングルは有名になりました。

そもそも「トライアングル」とは?

トライアングルオフェンスの基本形は、下の図のようなものです。

ユニークなところは、ガード#1がコーナーにいるということです。

45度の#2、コーナーの#1、ローポストの#5、この3人で「三角形(トライアングル)」を作ることがオフェンスのスタートです。

これがトライアングルオフェンスという名前の由来です。

まずは、#5のローポストにボールを入れて、1対1を狙います。

ボールがポストに入ったら、みんなが連動して動くことで、ダブルチーム行かせないというのが特徴です。

ブルズではジョーダンやピッペンが、レイカーズではコービーやシャックが、このポストで1対1をする主役でした。

ゴール下のシュートを狙いつつ、周りは動く約束になっているからダブルチームに行けない。

これがトライアングルオフェンスの魅力になります。

大事なパスは2つ目のパス

具体的な動き方の説明に入ります。

  • #1と#3が2ガードポジション
  • #2と#4が45度
  • #5がローポスト

最初のパスは#1から#2へのパスです。このパスをしたら、#1はコーナーにカットします。

これでトライアングルの完成です。

ここから、攻めが始まります。

#2がボールを持っていますが、この#2がどこにパスを出すのかがオフェンスを決めます。

選択肢は4つ

  • #5のローポストにパス
  • #1のコーナーにパス
  • #3のトップにパス
  • #4が(フラッシュしてくる)ハイポストにパス

この「2回目のパスをどこに出すのか」を、テックス・ウインターは「キーパス(カギとなるパス)」と言っています。

どこにパスを出すのかは、ディフェンスがどう守ってきているかによります。

例えば、下の図のようであれば、ローポストにパスが入りますので、入れます。

しかし、次の図ではポストに入れられません。でもコーナーには出せますから、コーナーにパスします。

さらに、ポストにもコーナーにもパスできなければ、トップに返します。

さらにさらに、トップにもパスできなければ、広く空いているハイポストにパスができます。

このようにディフェンスを見て、順番に判断するのです。

  • 1回目のパスでトライアングルを作る
  • ディフェンスの立ち位置を見る
  • 空いているところに2回目のパス

このようになります。

大事なのは2回目のパス(キーパス)であり、ディフェンスを見る目です。

テックスはディフェンスを判断することを「真実の瞬間(Moment of the Truth)」と言っています。

実際の動き

では最初にローポストにパスした場合です。

これは#1と#2が同時にカットします。

もしかしたらバックドアのパスが通るかもしれません。

そして、クリアした後、#2のスクリーンを使って#4がハイポストにフラッシュします。

ここが結構ノーマークになることが多いです。

このように動いておけば、パスコースを作りつつ、ディフェンスは#5にダブルチームできません

#5は攻め切れなければ、45度にパスを受けにくる#3にパスを返すこともできます。

 

次に、コーナーにパスした時です。

まず、#2は#5のスクリーンを使ってカットします。

パスをもらえたら#2がパスをもらいますが、ほとんどの場合はもらえないので、そのままカットします。

そして、#1と#5がピック&ロールします。

スペースが広くできているため、ピックが簡単にできます。

 

次は、トップにパスを出した時です。

#3にパスが返ってきたら、#4がハイポストにフラッシュしてパスを受けます。

#4にパスをしたら、#3が手渡しパスを受けるように走ります。

ハイポストを2人ではさむような動きになるので「ピンチポスト」と呼ばれるプレイです。

トップに返したら、ピンチポストでシュートまで行きます。

なお、逆サイドは#2が#1にダウンスクリーンします。

こうすることで、ディフェンスをカバーに行かせないための動きです。

 

最後は、ハイポストフラッシュです。

まず、このハイポストにパスする時は、「トップにパスが返せないから」というのが前提です。

だから#2から#3へのパスコースが、強くディナイされているわけです。

そこに#4がハイポストにフラッシュするのです。

パスが通れば、#3はバックドアに走ります。

ディフェンスのプレッシャーがきつければきつい分、バックドアが簡単に成功するでしょう。

まとめます。

キーパスを、

  • ローポストにパス → カット
  • コーナーにパス → ピック&ロール
  • トップにパス → ピンチポスト
  • トップにパスできない → フラッシュからバックドア

最後に 高校のコーチとして わたしの感想

ここまでがトライアングルオフェンスの解説です。

実は単純、シンプルだ、ということがわかってもらえると思います。

トライアングルオフェンスは、練習すれば高校生でもできるようになると思います。

わたしも過去に自分の生徒に教えたこともありますし、試す価値はあると思います。

しかし、思うことは

これは1対1をつくる動きであり、ノーマークは作れない

ということでした。

冒頭でもお話ししたように、これはスーパースターに1対1をさせて、ディフェンスにダブルチームさせないための動きとしてNBAで流行ったわけです。

だから得点力のある選手がいないと、1対1はできるけど、シュートは入らない、ということが起こるのです。

わたしもそうですが、平均的な選手たちで試合に勝つためには、

1対1の状況 ではなく 1対0の状況 をつくる

という戦術のほうが必要だと思います。

NBAでもトライアングルオフェンスの形だけ真似て、まったく勝てなかったチームも多くあるのは、このあたりに課題があるのでしょう。

だから高校生や中学生のコーチにとって、1対0をつくるオフェンスのほうが良いと思っています。

ただし、トライアングルオフェンスの素晴らしいところは、

状況判断能力を大事にしている

という点です。

ディフェンスを見て、プレイを選ぶ

どのようなオフェンスを指導するにしても、これは共通して大切なことなのです。

その点で、トライアングルオフェンスはコーチが学ぶべきオフェンスだと思います。

 

【参考書籍】

ABOUT ME
三原学
1981年、東京都生まれ。早稲田大学大学院卒。学生時代にマネージャーとなり、バスケ指導者を志す。 22歳から高校バスケ指導を始めて、早稲田実業高校ではウインターカップ出場、関東新人大会優勝。現在は母校の安田学園高校で監督を務める。選手が主役のチーム作り「ボトムアップ理論®︎」により、日本の部活動モデル校を目指している。 2024年から早稲田大学男子バスケットボール部のヘッドコーチも務める 日々学んでいる指導体験をブログやYouTube「バスケの大学」で発信して、総フォロワーは30,000人を超える。 日本バスケットボール協会公認A級コーチ、ジュニアエキスパートコーチ。ボトムアップ理論®︎エキスパートコーチ。 月刊バスケットボールにて「まんが戦術事典」を連載中。著書多数。
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