2026年バスケ戦術

ただ激しいだけではプレスにならない――失敗しないプレスディフェンスの教え方

こんにちは、三原です。いつもありがとうございます。

プレスディフェンスを指導するとき、選手に「もっと激しく行こう」「前からプレッシャーをかけよう」と伝えることがあります。

もちろん、プレスには運動量や積極性が必要です。相手に近づかず、簡単にボールを運ばせていたら、プレスにはなりません。

ただし、激しくボールを追いかけるだけでは、プレスディフェンスとは言えないと、わたしは考えています。

プレスディフェンスとは、ボールを奪うことが計画されているディフェンスです。

どこへ追い込むのか。どこで2人で挟むのか。どのパスコースをあえて空けるのか。そして、誰がそのパスを狙って飛び出すのか。

ここまで整理されて、初めてプレスになります。

今回は、プレスディフェンスに取り組む意味と、ボールを奪うための原理原則、そして2対2から4対4へつなげる具体的な練習方法を紹介します。

プレスディフェンスは、試合の作戦であると同時に選手を育てる練習

わたしは、プレスディフェンスは絶対に練習しておくべきだと思っています。

その理由は、試合でプレスを使うためだけではありません。プレスの練習そのものが、選手の成長につながるからです。

まず、プレスに取り組むことで、自分たちから試合の主導権を握ろうとする姿勢が生まれます。

わたしは長くバスケットボールを指導してきて、試合の主導権はディフェンスからしか握れないと考えるようになりました。

相手が何をしてくるかを待つのではなく、自分たちから仕掛ける。相手のやりたいことを制限し、こちらが試合の流れをつくる。その気持ちをチームに持たせることができます。

また、プレスは広いコートを守るので、ハーフコートディフェンス以上に体力が必要です。走る量が増え、方向転換も多くなります。

練習はきつくなりますが、その分、選手の体力向上につながります。

バスケットボールでは、ハンドリングやシュートフォームなど、その場で行う練習も必要です。しかし、競技の基本は走ることです。走りながら判断し、走りながら技術を発揮しなければ、試合では使えません。

プレスディフェンスには、次のような効果があります。

  • 自分たちから試合の主導権を握れる
  • 選手の体力が向上する
  • 短時間で連続得点する流れをつくれる
  • オフェンスのボールキープ力が高まる
  • ディフェンスのコミュニケーションが増える
  • 多くの選手に出場機会を与えやすくなる

特に大きいのは、オフェンス側の成長です。

日頃から強いプレスを受けていれば、ボールを簡単に失わないためのピボット、ボールキープ、パスの出し方、そして1対1で相手を破る力が身につきます。

わたしは、このボールキープ力と1対1で突破する力は、どんなオフェンスのフォーメーションよりも先に必要なものだと思っています。

どれだけ素晴らしいセットプレーを準備しても、プレッシャーを受けた瞬間にボールを失ってしまえば、オフェンスは始まりません。

プレスディフェンスには、もちろんデメリットもあります。

  • 体力の消耗が激しい
  • 積極的に守るためファウルが増えやすい
  • 強度を保つために交代選手が必要になる
  • 突破されると簡単なシュートを与えやすい
  • マークが入れ替わり、リバウンドが難しくなる

特に怖いのは、勝負をかけてプレスを仕掛けたのに、簡単に突破されて、逆に相手へイージーシュートを与えてしまうことです。

それでも、わたしはプレスの練習をする価値があると思っています。

たとえ試合でプレスを使わなかったとしても、しつこいディフェンスに負けない体力、ピボット、ボールキープ、判断力、声の連絡が身につくからです。

プレスの原則は「空ける・予測する・飛び出す」

プレスディフェンスとは、単にボールマンとの距離を詰めることではありません。

ボールを奪うことが計画されているかどうかが重要です。

ボールを奪うまでには、3つの段階があります。

  1. わざとパスコースを空ける
  2. そこにパスが来ることを予測する
  3. パスが出た瞬間にスティールへ飛び出す

ここが、プレスディフェンスを教えるうえで最も重要な部分です。

たとえば、ボールマンに対して2人でトラップを仕掛けたとします。

1人が自分のマークマンを離れてトラップへ行くので、当然どこかにノーマークができます。

そのとき、残ったディフェンスが2人のオフェンスの真ん中に立って、両方を守ろうとすることがあります。

しかし、真ん中に立つだけでは、ボールマンは左右どちらにもパスを出すことができます。これでは、ディフェンスがパスを予測できません。

そこで、片方のオフェンスには最初から寄っておきます。

「こちらにはパスを出せません」と見せたうえで、もう片方のパスコースをあえて空けるのです。

ボールマンから見れば、空いている選手は1人だけになります。当然、そこへパスを出したくなります。

そのパスを予測して、ディフェンスが飛び出します。

つまり、プレスはすべてを守るディフェンスではありません。

相手の選択肢をあえて1つに限定し、その選択を待ち構えるディフェンスです。

この原理を理解しないまま、「とにかく2人で挟め」と教えてしまうと、トラップした瞬間に他の場所が大きく空きます。

選手たちは一生懸命に走っているのに、簡単にパスを回され、最後はノーマークのシュートを打たれる。そういう失敗が起きます。

激しさを求める前に、まずは「どこを空け、どのパスを狙うのか」をチームでそろえてください。

横と縦のトラップを2対2から教える

トラップの方法は、大きく2つに分けるとわかりやすいです。

1つは、サイドラインへ追い込んで挟む「横のトラップ」です。

もう1つは、ガードポジションからドリブルで突破してきた選手を挟む「縦のトラップ」です。

横のトラップでは、まずボールマンをサイドライン側へ追い込みます。

ボールマンディフェンスは、サイドラインを踏むような位置まで体を寄せ、外側の進路を閉じます。

ボールマンがサイドライン際で行き止まりになり、ターンしようとした瞬間に、横から2人目のディフェンスがトラップへ行きます。

トラップが完成したら、ボールマンが返したくなるパスを予測して、次のディフェンスがスティールへ飛び出します。

パスを取れなかった場合は、そのまま立ち止まってはいけません。トラップへ行ったことで空いた場所を埋めるため、全員でマークをローテーションします。

縦のトラップでは、ガードポジションからドリブルで突破してくる選手を挟みます。

最初のボールマンディフェンスは、まっすぐ抜かれてはいけません。

体を横から寄せながら、ドリブラーを少し外側へ膨らませます。完全に止めるというよりも、進む方向を限定し、ヘルプが出やすい場所へ誘導します。

そしてドリブル2つ目くらいのタイミングで、下から2人目のディフェンスが飛び出し、縦に挟みます。

ここでも、トラップへ行ったディフェンスのマークマンが空きます。そのパスを他の選手が予測して狙います。

練習では、いきなり5対5のオールコートプレスから始める必要はありません。

まずは2対2で、横と縦のトラップを分けて練習することをおすすめします。

横のトラップでは、サイドラインへ追い込み、ターンした瞬間に挟む。パスが返ったら、2人のディフェンスがマークを交換します。

縦のトラップでは、ガードへパスを返したあと、クローズアウトからドリブルさせます。ドリブル2つ目くらいで下からヘルプが出て、2人で挟みます。

2対2でトラップのタイミングとローテーションを理解したら、4対4へ広げます。

4対4では、オフェンスをダイヤモンド型に配置します。

横のトラップと縦のトラップを繰り返し、トラップ、予測、スティール、ローテーションまでをセットで練習します。

この練習で、絶対に避けたいことが2つあります。

1つ目は、サイドライン側を抜かれることです。

サイドラインは、ディフェンスにとってもう1人の味方です。そこを閉じることで、ボールマンの逃げ道を減らすことができます。

ところが、サイドライン側を簡単に抜かれたら、トラップを仕掛けた意味がなくなります。そのまま数的優位をつくられ、プレスは崩壊します。

2つ目は、4人のディフェンスが広がりすぎることです。

オフェンスはコートを広く使おうとします。しかし、ディフェンスまで相手につられて広がってはいけません。

プレスはオールコートで行いますが、守っている4人、5人は常につながっている必要があります。

ダイヤモンドの形を小さく保つようなイメージで、チーム全体をコンパクトにします。

広がりすぎると中央に大きな穴ができ、1本のパスやドリブルで簡単に突破されます。

プレスディフェンスの練習では、どうしても「もっと走れ」「もっと激しく」と言いたくなります。

しかし、その前に確認したいことがあります。

どこへ追い込むのか。どこで挟むのか。どこをあえて空けるのか。誰がそのパスを狙うのか。そして、パスが通ったあとに誰がローテーションするのか。

この原理がそろっていれば、選手たちの激しさがボールを奪う力に変わります。

反対に、原理がそろっていなければ、どれだけ一生懸命に走っても、ただ疲れるだけのディフェンスになってしまいます。

まずは2対2で、横と縦のトラップを丁寧に教えてみてください。

ただ激しいだけの守りが、狙ってボールを奪えるプレスディフェンスに変わっていくはずです。

 

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ABOUT ME
三原学
1981年、東京都生まれ。早稲田大学大学院卒。学生時代にマネージャーとなり、バスケ指導者を志す。 22歳から高校バスケ指導を始めて、早稲田実業高校ではウインターカップ出場、関東新人大会優勝。現在は母校の安田学園高校で監督を務める。選手が主役のチーム作り「ボトムアップ理論®︎」により、日本の部活動モデル校を目指している。 2024年から早稲田大学男子バスケットボール部のヘッドコーチも務める 日々学んでいる指導体験をブログやYouTube「バスケの大学」で発信して、総フォロワーは30,000人を超える。 日本バスケットボール協会公認A級コーチ、ジュニアエキスパートコーチ。ボトムアップ理論®︎エキスパートコーチ。 月刊バスケットボールにて「まんが戦術事典」を連載中。著書多数。
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