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JJレディックは良いコーチだと思った話 24-10-26 #405

こんにちは、三原です。いつもありがとうございます。

この記事はラジオの原稿です。

この放送は、Voicyでお話ししています。ぜひお聞きください

 

開幕戦のロッカールームで起きた感動的な出来事

NBAの2023-24シーズンが開幕しました。

私は30年以上のレイカーズファンです。2020年の優勝以降は低迷が続いていましたが、今季は40歳の新人ヘッドコーチ、JJレディックを迎えての再スタートとなりました。

そんな開幕戦、フェニックスに勝利したレイカーズのロッカールームの映像を見て、私は思わず目を見張りました。

試合後のハドルで、レディックが一言話をした直後、選手たちから水をかけられるシーンがInstagramで流れていたのです。

優勝した時のシャンパンファイトや、日本のプロ野球でよく見るビールかけなら理解できます。でも開幕戦勝利でヘッドコーチに水をかけるなんて、私の記憶にはありません。

この光景を見た瞬間「このチームは絶対に良い方向に向かっているな」と直感的に思いました。

たった数ヶ月の間に、選手たちとこれほどの信頼関係を築けるなんて、並大抵のことではないはずです。

 

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レディックが語る「良いコーチの2大条件」

レディックは元々、名門デューク大学を卒業し、NBAで名シューターとして15年以上のキャリアを重ねた選手でした。

引退後はESPNなどでコメンテーターを務め、バスケの知識の深さには定評がありました。

しかし、コーチ経験が一切ないことは大きな不安要素でした。特にレイカーズという名門チームで、レブロン・ジェームスのような大物を扱えるのか、多くの疑問の声が上がっていました。

そんな中、レディックは「良いコーチとは何か」というインタビューで、2つの重要な要素を挙げています。

1つ目は「変化できるコーチであること」。

バスケットボールは日々進化しています。昔のバスケットと今のバスケットは全く違う。だからこそ、常に学び、変化に対応できる力が必要だと語っています。

これは恩師のマイク・シャシェフスキー(デューク大学の伝説的指導者)から学んだことだそうです。優れたコーチは1つの方法に固執せず、新しいものを取り入れる柔軟性を持っているのだと。

2つ目は「オープンかつクリアなコミュニケーションを取れること」。

これは選手時代の経験から確信を持っているそうです。コーチの仕事は「選手を助けること」。そのためには、常に選手と対話を重ねる必要があると考えているのです。

たった3ヶ月で劇的に変化したレイカーズのバスケット

この2つの要素は、実際のチーム作りにもはっきりと表れています。

プレシーズンから開幕戦までを見ていると、オフェンスの形が明らかに変わっています。

例えば、アンソニー・デイビスの使い方。彼は昨シーズン、本来の希望とは違いセンターとしてプレイすることを求められていました。

しかし今季は、デイビスが得点を取りやすい位置でボールを受け取れるセットプレーが増えています。選手の特徴を最大限に活かそうとする工夫が見られます。

また、昨シーズンまでのレイカーズは、レブロン・ジェームスの1対1に頼りすぎる傾向がありました。

今シーズンは、チーム全体でボールを動かし、スクリーンを絡めてスペースを作る。その結果としてノーマークのシュートチャンスが増えています。

わずか3ヶ月でここまでオフェンスを変えられるというのは、私から見てもかなり衝撃的でした。

若手ヘッドコーチの懐の深さ

コミュニケーション面でも、レディックの手腕は光ります。

特筆すべきは、アシスタントコーチの人選です。スコット・ブルックスとネイト・マクミランという大物を採用しました。

2人とも自分より年上で、ヘッドコーチとしての経験も豊富。ブルックスはオクラホマシティで、マクミランはインディアナとアトランタで、それぞれプレイオフ常連チームを作り上げた実績があります。

40歳の新人ヘッドコーチが、経験豊富な先輩を脇に置くのは、相当な決断だったはずです。

普通なら「自分の色を出しにくくなる」と考えるところですが、レディックは違いました。

練習風景を見ていると、2人のベテランと頻繁に会話を交わしている様子が伝わってきます。

1人で全てを決めるのではなく、先輩コーチの意見も積極的に取り入れながら、チームを作り上げようとしているのです。

徹底的に選手の立場に立つ姿勢

開幕戦後の記者会見でも、興味深い場面がありました。

その試合、レイカーズの3ポイントシュート成功率は10%台と低調でした。

普通なら「シュートの調子が悪かった」で終わるところですが、レディックは違いました。

試合中、たまたまベンチに転がってきたボールを触った時、それが新品すぎることに気づいたというのです。

元シューターとして「ボールは少し使い込んだ方が扱いやすい」ということを知っている。だから「新品のボールを使うのはおかしい」とリーグに改善を求めると明言したのです。

シュート不調を選手の責任にするのではなく、環境の問題として捉え、選手を守る。

この姿勢こそ、選手との信頼関係を築く秘訣なのかもしれません。

わずか数ヶ月の就任期間ですが、レディックの良いコーチぶりには学ぶべきことが多くあります。

変化を恐れず、コミュニケーションを大切にする。

そして何より選手のために全力を尽くす。

新しい時代の理想的な指導者像を、レディックは体現しているように思えます。

“変化”というキーワードの深い意味

レディックは「良いコーチの条件」として、真っ先に”変化できること”を挙げています。

これは単に「新しいことを取り入れる」という表面的な意味ではありません。

むしろ、自分の経験や価値観を一度リセットできる勇気のことを指しているのだと思います。

レディックは名シューターとして、たくさんの成功体験を持っています。

だからこそ「自分の時代はこうだった」「このやり方が正しい」という固定観念に縛られがちです。

しかし彼は、そういった過去の成功体験に頼ることを敢えてしていません。

指導者の”押しつけ”が最大の罠

私も指導者として20年近いキャリアがありますが、これは本当に難しいことです。

自分が選手時代に経験したことは、どうしても「正解」のように思えてしまいます。

「このプレーは、こうやるべきだ」 「この場面では、これが正しい」

そう思い込んで、選手に押しつけてしまうことは少なくありません。

しかしバスケットボールは、この20年で劇的に変化しました。

3ポイントの重要性は増し、ポジションレスが当たり前になり、テクノロジーの発展で分析手法も変わりました。

だからこそレディックは「変化できること」を重視したのでしょう。

コミュニケーション力の本質とは

もう1つのキーワードである”コミュニケーション力”も、深い意味を持ちます。

レディックの練習風景を見ていると、よく選手に話しかけている姿が映ります。

しかし、それは一方的な指示や命令ではありません。

選手の意見を聞き、時には冗談を交えながら、対話を重ねているのです。

昨今、コミュニケーション力の重要性は、どの業界でも叫ばれています。

しかし、その本質は「いかに上手く伝えるか」ではなく「いかに相手の話を聞けるか」にあるのだと思います。

選手との信頼関係を築く極意

開幕戦の試合後、新品のボールについて言及したシーンは印象的でした。

シュートの調子が悪かった理由を、環境の問題として捉え、リーグに改善を求める。

この一連の行動には、深い意味があります。

選手にとって、自分を守ってくれる指導者ほど心強いものはありません。

パフォーマンスが悪かった時、簡単に責められない。むしろ、自分のために戦ってくれる。

このような信頼関係があれば、選手は安心してプレーに集中できます。

逆に言えば、この信頼関係なくして、どんなに素晴らしい戦術や練習メニューも意味を成さないのです。

指導者に求められる新しい価値観

「変化できる」「コミュニケーションを大切にする」「選手を守る」

これらは、一見すると当たり前のように聞こえます。

しかし、実際の指導現場では、なかなか実践できていないのが現状ではないでしょうか。

むしろ逆の価値観、つまり

「経験に基づいた指導を貫く」 「選手に厳しく接する」 「結果で評価する」

こういった古い価値観の方が、まだまだ根強く残っているように感じます。

しかし、これからの時代に必要なのは、レディックが実践しているような新しい指導者像なのではないでしょうか。

私も、この記事を書きながら、自分の指導を振り返っていました。

選手の話をもっと聞けているだろうか。 変化を恐れていないだろうか。 本当に選手のために全力を尽くせているだろうか。

まだまだ課題は尽きません。

でも、このレディックの姿勢から学び、少しずつでも成長していきたいと思います。

きっとあなたも、似たような思いを抱えているのではないでしょうか。

これを読んでくださったみなさんと一緒に、より良い指導者を目指していけたら嬉しく思います。

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ABOUT ME
三原学
1981年、東京都生まれ。早稲田大学大学院卒。学生時代にマネージャーとなり、バスケ指導者を志す。 22歳から高校バスケ指導を始めて、早稲田実業高校ではウインターカップ出場、関東新人大会優勝。現在は母校の安田学園高校で監督を務める。選手が主役のチーム作り「ボトムアップ理論®︎」により、日本の部活動モデル校を目指している。 2024年から早稲田大学男子バスケットボール部のヘッドコーチも務める 日々学んでいる指導体験をブログやYouTube「バスケの大学」で発信して、総フォロワーは30,000人を超える。 日本バスケットボール協会公認A級コーチ、ジュニアエキスパートコーチ。ボトムアップ理論®︎エキスパートコーチ。 月刊バスケットボールにて「まんが戦術事典」を連載中。著書多数。
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