YouTube原稿

周りにパスしない選手への指導法【バスケの大学・三原学】

【難問】パスをしない選手、どう指導するか?──信頼の鍵は「アクティブリスニング」

こんにちは、三原です。

今回はとても難しいテーマを取り上げます。

「パスをしない選手」への指導法について。

ある日、YouTubeのコメント欄に、こんなご相談をいただきました。


県内有名中学出身のA君は、高校入学後に味方にパスをせず、アイソレーションばかりします。
周りから「パスを回してくれ」と注意しても、「俺より上手いやつがいたらパスする。お前らが下手だから俺が輝けない」と返されます。
成功率は20%程度。先生の指導に期待するしかありませんが、言っても伝わらない選手にどう対応しますか?


このコメント、正直いってかなり難しいです。

でも、同じような経験をしたことがある指導者もきっと多いはず。わたし自身も、こういうタイプの選手に何度か出会ってきました。

今日はその中で感じたこと、そして「どうすればチームが前に進めるのか」を一緒に考えていきたいと思います。


この選手は「悪意」でパスしないわけじゃない

まず、はじめに大事なのは、こういう選手を「悪意のある子だ」と決めつけないことです。

わたしの経験上、こういう選手は「とにかく勝ちたい」んです。

誰かを傷つけようとしてるんじゃない。パスをしないのも、自己中心的に見えるのも、突き詰めれば「勝ちたい、認められたい」っていう気持ちの現れです。

ただ、やり方が間違っている。それだけなんです。


キーワードは「アクティブリスニング」

こういう選手と向き合う時、指導者として最も大切にしたいのが、「アクティブリスニング」という姿勢です。

これは、わたしが赤羽雄二さんから学んだ考え方です。

「相手の興味に興味を持って、真剣に話を聴く」

これがアクティブリスニングです。

これができれば、信頼関係を築くことができます。

信頼ができれば、問題の本質が見えてくる。問題の本質が見えれば、解決の道も見えてくる。

つまり、アクティブリスニングは、指導者にとっての魔法の杖なんです。


まずは「話を聴く」ことから

もしわたしがこのチームの指導者だったら、まずA君と1対1で、時間をとってじっくり話を聴きます。

「このままではうまくいかない」と、本人も心の奥では分かっているはず。でも、それをどう変えればいいかが分からない。

だからこそ、こちらから問いかけてみるんです。

「いまのバスケ、楽しいか?」
「自分はチームの中でどうしたいと思ってる?」
「どうすればもっと勝てると思う?」

ポイントは、アドバイスしないこと。叱らないこと。

ただ、話を、聴く。

これが、変化の第一歩になります。


指導は「数字」と「映像」で振り返る

次に、パスのことや成功率について伝えるときは、「行動指示」ではなく「客観データ」で示すようにします。

「お前、シュート入りすぎだろ!」とか「パスしろよ!」という感情的な注意ではなく、

「いまのシュート成功率は20%くらいだよ」
「このシーンでは、ここにパスを出せば高確率だったね」

というように、数字と映像で冷静に振り返ることが大切です。

このコメントをくれた方が成功率まできちんと把握しているのは本当に素晴らしいこと。ここまでデータを持っていると、選手との対話も具体的になります。


彼を「オフェンスリーダー」にするという発想

ここでちょっと発想を変えてみましょう。

A君を「問題児」ではなく、「チームのオフェンスリーダー」として任命するんです。

彼自身に、システムを考える役割を与える。

「じゃあ、どうすればチームがもっと点を取れると思う?」
「スクリーンから動いて、自分が攻めたとき、どこにパスが欲しい?」
「チームメイトには、どんな動きをしてほしい?」

こうやって彼を“考える側”に立たせて、システムを一緒に作っていく。

これはボトムアップの指導法ですが、わたしは過去にこれで上手くいったことがあります。


「俺はこう攻めるから、ここに動いてくれ」

戦術に自分が関わっていると、選手は責任感を持ちます。

そして、チームの他のメンバーも、「あいつがそう言うならやってみよう」と納得しやすくなる。

そのうちに、A君がパスを出す場面が増え、周囲が活き始める。

周囲が活きれば、ディフェンスの意識が分散して、結果としてA君自身も攻めやすくなる。

こうして「良い循環」が生まれていくのです。


最後の手段は「選手交代」

ここまでやっても、まだ状況が改善しない。周囲を無視して無理なプレーを続ける。

そんな時は、はっきりと伝えるしかありません。

「君はチームの動きにそぐわない。だから交代です」

これは仕方のないことです。チームスポーツですから。

でも、ここに至るまでに、できることはたくさんあります。


まとめ

パスをしない選手の背景には、たいてい「勝ちたい」「認められたい」という強い気持ちがあります。

それを理解して、まずはアクティブリスニングで信頼関係をつくる。

その上で、数字と映像で冷静に振り返り、必要があればシステム作りに参加させる

すぐには変わらないかもしれない。でも、これが最善の順番だとわたしは思っています。

ぜひ参考にしてください。

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三原学
1981年、東京都生まれ。早稲田大学大学院卒。学生時代にマネージャーとなり、バスケ指導者を志す。 22歳から高校バスケ指導を始めて、早稲田実業高校ではウインターカップ出場、関東新人大会優勝。現在は母校の安田学園高校で監督を務める。選手が主役のチーム作り「ボトムアップ理論®︎」により、日本の部活動モデル校を目指している。 2024年から早稲田大学男子バスケットボール部のヘッドコーチも務める 日々学んでいる指導体験をブログやYouTube「バスケの大学」で発信して、総フォロワーは30,000人を超える。 日本バスケットボール協会公認A級コーチ、ジュニアエキスパートコーチ。ボトムアップ理論®︎エキスパートコーチ。 月刊バスケットボールにて「まんが戦術事典」を連載中。著書多数。
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